肥満が引き起こすリスクと健康的な生活への第一歩

記事の監修

グランソール奈良 院長辻村 貴弘

<経歴>

2000年3月奈良県立医科大学大学院薬理学専攻修了
2001年4月グランソール奈良開設 院長に就任
2005年3月医療法人拓誠会 辻村病院 理事長に就任
2010年3月京都府立医科大学大学院免疫・微生物学専攻修了
資格:医学博士、日本人間ドック学会認定医

~はじめに~

 

近年、日本人の肥満割合が増加傾向にあることが

指摘されています。

 

肥満によるリスクは多岐にわたるため、

日々の生活習慣を改善し、

適切な体重を維持することが大切です。

 

 

主な背景としては、次のことが挙げられます。

  • 食生活の欧米化
  • 移動手段の発展や働き方の変化による運動不足
  • ストレスや生活リズムの乱れ
  • 加齢に伴う基礎代謝の低下

 

 

また、令和5年の厚生労働省が実施した

「国民健康・栄養調査」によると、日本人の肥満率は

男性31.5%女性21.1%となっています。

 

※詳しい調査結果は下記よりご覧ください。

「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」より一部抜粋

 

 

本記事では、

肥満の原因や肥満リスクを防ぐために重要なポイントを

紹介します。

 

 

肥満によるリスク

 

 

 

肥満になると、糖尿病や脂質異常症などの

生活習慣病になるリスクが高まると言われています。

 

 

生活習慣病の多くに共通する特徴として、

初期の段階では自覚症状がないことも多く、

診断時には症状が進行していることがあります。

 

 

初期段階で発見し症状の悪化を防ぐためには、

定期的に検査を受け、結果に応じた対策を講じることが

重要になります。

 

 

|生活習慣病のリスク

 

 

 

肥満になると、

次のような生活習慣病のリスクが高まります。

 

  • 糖尿病(特に2型糖尿病): インスリン抵抗性が高まり、血糖値が上昇しやすくなります。
  • 高血圧: 体重増加に伴い心臓や血管への負担が増加します。
  • 脂質異常症: 血中のコレステロールや中性脂肪が増え、動脈硬化のリスクが高まります。
  • 一部のがん(乳がん、大腸がん、肝臓がんなど)の発症リスクが高まることが研究で示されています。

 

 

|精神的健康

 

肥満リスクは精神的な面でも起こり得ます。

 

例えば、肥満による見た目の変化は

自己評価の低下やうつ病のリスクを高める可能性があります。

 

 

特に、年齢を重ねると

肌のたるみや筋肉量の低下と相まって、

体型の変化が目立つようになります。

 

 

また、若い頃に効果的だったダイエット法が

通用しなくなることもあります。

 

 

|肥満による関節や呼吸器への影響

 

 

 

体重増加は膝や腰などの関節に負担をかけ、

関節炎や関節痛の原因となることがあります。

 

 

特に40代以降は、運動不足による筋肉量の減少や

体脂肪の増加が加わり、そのリスクが高まります。

 

 

一度、関節炎や関節痛を引き起こすと、

さらに運動の機会が減少するため悪循環に陥ることも

あります。

 

 

また、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクが

高まり、睡眠の質が低下します。

 

 

|妊娠や生殖機能への影響

 

妊娠中の過剰な体重増加は、妊娠糖尿病や

血栓症、妊娠高血圧症候群のリスクを高めます。

 

 

出産時のリスクとしては、

帝王切開や手術後の合併症になる可能性が高まる

と言われています。

 

 

さらには、胎児への影響として巨大児(マクロソミア)や

先天性異常のリスク増加、長期的な健康リスク増加などの

可能性が高まります。

 

 

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肥満になる原因

 

肥満の原因は人によってさまざまです。

 

基本的には、摂取カロリーが消費カロリーを上回る

ことで体重は増加します。

 

 

しかし、他にもさまざまな要因があるため

本章で詳しく紹介します。

 

まずは体重増加の原因を知り、

その要因を取り除くことが大切です。

 

 

|不適切な食生活による肥満

 

 

 

食べ過ぎによる余分なエネルギーは

脂肪として蓄積されます。

 

そして、蓄積された脂肪が肥満の原因となります。

 

 

特に、高カロリー食品や加工食品、

砂糖を多く含む飲み物の過剰摂取は

体重増加に大きく影響します。

 

 

さらに、高脂質や高糖質で栄養バランスが偏ると

肥満のリスクが高まります。

 

 

また、夜遅くに食べると消化が不十分になり、

体脂肪として蓄積されやすくなります。

 

 

加えて、小腹が空いたときの間食や

ストレスによる過食も体重増加の要因となります。

 

 

|加齢による筋力や基礎代謝の低下

 

筋力の低下は40代以降から徐々に進行し、

60代以降で顕著となります。

 

 

主な原因としては、加齢による筋肉量の減少です。

(=サルコペニア)

 

筋肉量の減少と同様に基礎代謝も低下します。

 

そのため、若い頃と同じ食事量や運動量では

体重が増加します。

 

 

従って、肥満になる可能性も高まります。

 

 

|更年期やホルモンバランスの乱れ

 

 

 

女性の場合、更年期による影響も考えられます。

 

例えば、更年期にはエストロゲンが減少すると

言われています。

 

 

エストロゲンの役割には、

食欲の抑制や代謝の調整があります。

 

つまり、エストロゲンが減少すると体重増加の可能性が

高まります。

 

 

男性の場合も更年期による影響は考えられます。

 

男性更年期障害は男性ホルモン(テストステロン)の

減少によって起こります。

 

 

テストステロンの役割には、

筋肉量の増加を促す働きがあります。

 

つまり、テストステロンが減少すると筋肉量が低下し、

内臓脂肪の増加につながります。

 

 

|運動不足や睡眠不足による肥満

 

運動不足や睡眠不足は

体重増加につながる可能性が高いです。

 

 

例えば、デスクワークや車での移動が多い方は

日常生活で運動量が少なく、消費カロリーが減少します。

 

 

そして、睡眠不足は空腹感を増加させる「グレリン」の

分泌を増やします。

 

 

一方で、満腹感を感じる「レプチン」を減少させるため、

食べ過ぎを招く可能性があります。

 

 

加えて、睡眠不足によりエネルギー不足を感じ、

活動量が減少します。

 

 

|ストレスや薬の副作用

 

ストレスによるコルチゾールの過剰分泌も

肥満になる原因の一つです。

 

 

コルチゾールとは、ストレスに対処するためのホルモンで

”ストレスホルモン”とも呼ばれます。

 

 

コルチゾールの役割には、

糖新生や脂肪分解などがあります。

 

生体にとっては必須ホルモンである一方、

過剰分泌は健康リスクが高まります。

 

 

その一つに、過剰な空腹感による体重増加が

挙げられます。

 

 

また、抗うつ薬やステロイド薬、糖尿病薬など、

一部の薬は副作用として体重増加を引き起こす

ことがあります。

 

その際は、かかりつけ医に相談しましょう。

 

 

 

 

 

健康的に痩せる方法

 

健康的な身体を手に入れるために、

過度なダイエットは控えましょう。

 

過度なダイエットより、ホルモンバランスを意識しつつ、

バランスの取れた食事や適度な運動、

ストレスケアを取り入れることが重要になります。

 

 

また、体重管理も重要な習慣です。

 

体重管理は見た目だけでなく、

健康維持や生活の質に直結すると考えられています。

 

 

定期的に体の変化を測ることにより、

モチベーションアップや自分に合った体重管理の方法を

見つけることに繋がります。

 

 

|バランスの良い食事

 

 

●栄養素のバランスを重視

☞主食(炭水化物)、主菜(タンパク質)、副菜(野菜)を組み合わせた食事をとる。

加工食品や砂糖を多く含む食品は控えめに。

 

●食物繊維を摂取

☞野菜、果物、全粒穀物、豆類を積極的に摂ることで満腹感を得やすくなり、血糖値の急上昇を防ぎます。

 

●間食をヘルシーに

☞ナッツやヨーグルト、果物などを選ぶ。

 

 

|適度な運動で肥満リスクを回避

 

 

 

いきなり激しい運動をすると怪我等のリスクがある為、

まずは次のような運動を推奨します。

 

  • 有酸素運動
    ⇒ウォーキング、ランニング、水泳、サイクリングなどを週に3〜5日、30〜60分程度行う。
  • 筋力トレーニング
    ⇒筋肉量を増やすことで基礎代謝を高め、脂肪を燃焼しやすい体を作る。
  • 日常生活での活動を増やす
    ⇒階段を使う、通勤で歩くなど、日常の小さな運動を増やす。

 

 

|食事の習慣を見直す

 

いわゆる「早食い」をしていると、

食べすぎや胃腸への負担が増えるなどの

マイナス要因があります。

 

 

一口ずつしっかり噛む・ゆっくり食べることで

満腹感を感じやすくなります。

 

また、規則正しい時間に食べることで

血糖値の乱れを防ぎ、過食を予防できます。

 

 

|ストレス管理と睡眠

 

 

 

近年の日本では、

ストレスを感じる人が増加していると言われています。

 

 

前述したように、ストレスは過食などを引き起こす

原因となります。

 

 

ストレスを溜めない工夫として、

ヨガや瞑想、趣味の時間を持つなど、

リラックスできる方法を見つけることが大切です。

 

 

また、質の良い十分な睡眠(7〜8時間)を

確保することでホルモンバランスを調整することが

できます。

 

 

 

体重維持のコツ

 

適切な体重を維持するために大切なことは

いくつかあります。

 

 

一般的に言われるのは「バランスの取れた食事」や

「適度な運動」、「十分な睡眠」です。

 

他にも、ストレス解消や定期的な検査の受診などが

あります。

 

何より、これらを継続して行うことが重要です。

 

 

継続するためのコツとして、次のことが挙げられます。

  • 過度な食事制限をしない
  • 一人ではなく誰かと共有して行うこと
  • 日々の食事や体重を目に見える形で記録する

 

自分なりに工夫して、

良質な健康習慣を手に入れましょう!

 

 

|持続可能な生活習慣を手に入れる

 

適切な体重を長く維持するためには、

短期間の極端なダイエットではなく

続けられる習慣を取り入れることが大切です。

 

 

急激に減量した場合はリバウンドしやすいので、

徐々に減らすことを意識しましょう。

 

 

そもそも肥満と肥満症は定義が異なります。

 

肥満の方はBMI値を正常値に近づけることを

目標にすると良いです。

 

 

しかし、肥満症の方はBMI値だけでなく

内臓脂肪を減らすことが重要になります。

 

*肥満と肥満症の違い等に関する詳細は下記をご参考ください。

<参考文献>
日本肥満学会編「肥満症診療ガイドライン2016」ライフサイエンス出版, 2016.

 

 

|体重管理を習慣化

 

 

 

体重管理を習慣化するためには、

「毎日」または「週に数回」体重を測定し、

目に見える形で増減を把握することが重要です。

 

 

その際、できるだけ同じ時間(条件下)に

測定することを意識しましょう。

 

また、増加の兆候があればできる限り早めに

対処しましょう。

 

 

|生活環境を整えて肥満を予防

 

健康的な食品を常備し、高カロリーな食品を

家に置かないようにしましょう。

 

 

また、テレビやスマホを見ながらの食事が習慣化

している方は、食事に集中することを意識しましょう。

 

 

たくさん噛んで(1口30回以上)ゆっくり食べることで

満腹感を得られ、過食を防ぐことに繋がります。

 

 

|社会的サポートを活用

 

 

 

一人で頑張ろうとすると続かないことが多いですが、

家族や友人と一緒に目標を共有することで

継続しやすくなります。

 

 

必要に応じて医師や保健師・管理栄養士に相談

することも、一つの手段としては良いかもしれません。

 

 

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|注意点

 

過度な食事制限や高負荷な運動は、

体への負担が大きすぎて逆効果になることがあります。

 

 

体重だけにこだわらず、体脂肪率や筋肉量なども

チェックすることが大切です。

 

急激な体重減少は悪影響を及ぼす可能性があるため

注意しましょう。

 

 

 

 

 

~まとめ~

 

肥満になると糖尿病や高血圧、脂質異常症など、

生活習慣病のリスクが高まります。

 

 

また、見た目の変化による自己評価の低下や

うつ病のリスクを高める可能性もあります。

 

肥満のリスクを回避するためには、

「バランスの取れた食生活」「適度な運動」

「ストレス管理」「十分な睡眠」が重要です。

 

 

健康的な体を手に入れるためには

”日々の小さな積み重ね”が大切です。

 

まずは「1日プラス10分の散歩」や

「よく噛んでゆっくり食べる」など、

取り組みやすいことから始めましょう!

 

 

また、急激な体重増加がある場合や自己管理が

難しい場合は、医師や保健師・管理栄養士に

相談することをおすすめします。

 

 

※参考文献(2025年4月18日 現在)

 

 

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2026年1月21日更新